【夏川草介おすすめ小説】神様のカルテの著者が描くコロナとの戦い

臨床の砦5.おすすめ小説
著者「夏川草介」作品名「臨床の砦」

2020年以降、新型コロナウイルスの世界的流行によって、医療従事者の人たちは、感染リスクにさらされながらも、患者の治療や看護を続けておられました。

でも、第1波、第2波、第3波と緊急事態宣言の解除とともに患者数が急増し、医療従事者の人たちは激務に晒され、過剰な労働やストレスに苦しんでいたことは、ニュースなどでご存じの人もいらっしゃると思います。

でも、報道されていた内容が医療現場の全てでしょうか。

医療現場の人たちは、患者の治療に尽力しようとしていたと思いますが、でも、患者数が急増し、医療機関のベッド数や医療従事者の数が限られているため、医療現場は常に過負荷の状態になり、患者の治療にあたっても満足な治療ができないことで、苦しんだ医療従事者の人も多かったのではないでしょうか。

今回ご紹介する本は、夏川草介さんの「臨床の砦」です。

医療小説の「神様のカルテ」をご存じの人もいらっしゃると思います。その神様のカルテの著者「夏川草介さん」がコロナとの戦いを描いているのが「臨床の砦」です。

コロナ禍の医療現場は、ニュースでも報道されていましたので、医療崩壊寸前になっていたことは知っていたのですが、本書を読んで今までの認識が甘かったことがわかりました。

未知のウィルスであった新型コロナウイルスへの医療現場の受け止め方は、私たちの予想以上に恐怖の対象だったようです。

「臨床の砦」は、命がけでコロナに立ち向かった小さな病院を描いた物語です。

経済優先の政府の対応により緊急事態宣言が解除されて襲ってきた第3波の1ヶ月を描いた「臨床の砦」は、まさにコロナ禍の医療現場の真実の姿だと思います。

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現役医師の夏川草介さんの描くコロナとの戦いは、沢山の人に読んで欲しいと思います。

夏川草介さんのご紹介

夏川草介さんは、1978年大阪生まれで、信州大学を卒業されて今も現役医師で医療現場でも活躍されています。

2009年に「神様のカルテ」で第10回小学館文庫小説賞を受賞して作家デビューされました。

夏川草介さんの代表作の「神様のカルテ」は、シリーズ作品で「神様のカルテ」「神様のカルテ2」「神様のカルテ3」「神様のカルテ0」「新章神様のカルテ」と5シリーズ出版されています。

主人公のキャラクターが際立つ作品で、妻の職業が登山写真家という設定も意外性があり、過酷な医療現場を描いた作品でありながら、お互いを理解しあい、そして助け合いながら奮闘する姿に心が温まります。

また、「神様のカルテ」は映画やドラマ化もされていますので、映像作品としても楽しめます。

医療小説以外にも「本を守ろうとする猫の話」「始まりの木」などもあります。

夏川草介さんの小説は、登場人物の優しい言葉使いと、読みやすい表現で、どの作品も読み始めたら止まらない素晴らしい作品です。

今回ご紹介する本

本のあらすじと感想

長野県の北アルプスのふもとにある小さな総合病院「信濃山病院」が舞台です。

信濃山病院は、感染症指定病院として感染開始初期のクルーズ船の感染者の受け入れからコロナ診療に従事している病院です。

物語は、コロナ診療から1年近くになる2021年1月、第1波、第2波と多くの患者を治療してきた、コロナとの戦い、その第3波の1ヶ月間が描かれています。

同じ地域にある病院の中で、コロナ患者の受け入れを行っている病院は、信濃山病院と信濃山病院を背後から支えている筑摩野中央医療センターだけです。

信濃山病院は、この地域のコロナ患者の受け入れの最前線であり、新型コロナウイルスの影響を一番受けている病院です。

その信濃山病院でコロナ診療に携わっている敷島先生が主人公の医療小説です。

○コロナの窓口になる発熱外来では、明らかに患者数が増加し始めていました。

○それでも経済優先の政府の対応は、緊急事態宣言を発出する気配もありません。

○地域の他の病院は、大学病院を含めコロナ患者の受け入れを拒否しています。

○iPadを活用したオンライン診療は、最新の医療方法と思われますが、実際は診療自体が困難なものになり、駐車場にはコロナの恐れのある患者の車が渋滞しています。

○院内感染を防ぐために、適切な防護具を着用し、手洗いや消毒などの基本的な感染対策を徹底したうえでの医療による疲労は、想像以上に蓄積してきていました。

そんな状況で、第3波のコロナの感染爆発が起こり、想像を絶する状況に置かれている最前線の医師や看護師、そして家族の物語です。

コロナ禍の医療現場

「第1話、青空」では、医療崩壊寸前の敷島先生たちの「コロナに対する恐れ」と「周囲への不信感」が描かれています。

何が正しくて、何が間違っているのかもわからない状況で、医療を行うことの難しさと第3波の感染爆発の恐れから「この戦負けますね」と言った、いつも冷静な敷島先生の言葉が印象的でした。

「第2話、凍てつく時」では、とにかく耐えるしかないコロナ医療の過酷な現場で、コロナ患者の医師たちの中にも、意見の相違が出ながらも、とにかく患者の治療に専念する敷島先生にコロナの魔の手が迫ります。

敷島先生を凍らせた瞬間は、医療に従事していない人にも鈍い感覚とともに胸に刺さると思います。

「第3話、砦」は、信濃山病院に最悪のことが起こります。でもそれは、医療崩壊すら乗り越えて医療に従事してきた医療現場の真の姿であることが、実感できました。

コロナ患者の最前線で戦ってきた医療現場の真の姿が、「砦」を読んで初めてわかりました。

夏川草介さんの医療小説のメッセージは、どの作品を読んでも深く胸に刺さります。

でも、「神様のカルテ」や「勿忘草の咲く町で」と比較すると切実さがま増して、人情味のあるエピソードは少なかったように感じました。

それが、逆にコロナ禍の医療現場の過酷さを表していて、夏川草介さんが描くコロナとの戦いなんだと深く感じました。

まとめ

夏川草介さんの「臨床の砦」をご紹介しています。

神様のカルテの著者「夏川草介さん」がコロナとの戦いを描いている医療小説です。

命がけでコロナに立ち向かった信濃山病院の医師や看護師、そして家族の物語です。

2021年1月の第3波の1ヶ月を描いた「臨床の砦」は、まさにコロナ禍の医療現場の真実の姿だと思います。

現役医師の夏川草介さんの描くコロナとの戦いは、沢山の人に読んで欲しいと思いました。

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