殺人罪等の重い犯罪を犯した場合、日本には「無期懲役刑」があります。
「死刑」の次に思い刑罰なので「無期懲役になった殺人者は、二度と刑務所から出られない」と思っている人も多いかも知れませんが、そんなことは無いそうです。
日本の刑法では「刑務所に入所後、10年を過ぎると刑務所から出所できる可能性が生まれます。」そして、「無期懲役の平均懲役期間は25年」と言われています。
また、日本では一人殺しても「死刑」になる可能性は低いとも言われています。

家族を身内を無残にも殺された遺族にとって、いつか出所することが出来る日本の「無期懲役」は納得できるでしょうか。
切羽詰まったどうしようもない理由で、人を殺めてしまった人にとって、「罪を償う」機会が「死刑」で良いのでしょうか。
今回ご紹介する本は、東野圭吾さんの「虚ろな十字架」です。
「殺人者でも何年間か刑務所にいれておけば、真人間に改心する」という遺族から見たら到底納得できない日本の刑法を「虚ろな十字架」と表現している社会派ミステリー作品です。
殺人を犯しながら「虚ろな十字架」で罪を償った人と、過去犯した「重い十字架」に押しつぶされながら、罪を償い続ける人の人生が交錯する作品です。
犯罪者の再犯率が高い日本においては「人を殺した人を死刑にすれば、もうその人に殺される人はいない」というのも正しいと思います。
「例え殺人者でも、自分の罪に向き合って、罪を償う時間が必要だ」というのも正しいと思います。
「人を殺せば死刑!」か「死刑は無力か?」の殺人の審判を考えさせられる作品です。
東野圭吾さんのご紹介
東野圭吾さんは、最初から作家として活動しておられた訳ではなく、大学卒業後は、デンソーに勤務しながら、兼業作家として作家活動を開始され、その後デンソーを退職し、専業作家になったそうです。
日本を代表する作家さんで、初期の作品「放課後」から江戸川乱歩賞に受賞される等、数々の賞を受賞し、映画、ドラマの原作も多数出版されています。
私は、マンガは良く読んでいたのですが、子供が出来てからは、なぜかマンガを読まなくなり、その後「小説でも読んでみようかな」と思ったときに図書館で「放課後」を借りたのが、東野圭吾さんの作品との出会いで、そしてとても好きになりました。
東野圭吾さんの作品は、活字に慣れていない人にも読みやすい作品なので、初めて小説を読もうと思っている人におすすめしたいと思います。
今回ご紹介する本
本のあらすじ
ペットの葬儀を行うエンジェルボートを経営する「中原道正さん」と大学医学部付属病院に勤務する「仁科史也さん」2人の人生を中心にストーリーは展開します。
中原道正さんは、妻の小夜子さんと一人娘の愛美さんと暮らしていましたが、両親が留守の時に空き巣狙いの強盗によって、愛美さんが殺害されます。
その犯人は、過去にも殺人事件を犯し一度は「無期懲役」で刑務所に服役していましたが、仮出所で出所した後に起こした犯罪でした。
その犯罪は死刑の判決が出ますが、2人は離婚します。その時から数年たって、元妻の小夜子さんが殺害されます。
無差別路上強盗殺人の犠牲になった小夜子さんの犯人は、事件のあった翌日に自首します。
その犯人の義理の息子が「仁科史也さん」です。
妻の父親が殺人者になったこともあり仁科史也さんは、母親や身内から離婚するよう迫られます。
そんな時に、小夜子さんが本を出版するための原稿が見つかります。その本の足跡をたどる中原道正さんが、事件の真相に迫ります。

「人を殺せば死刑!」か「死刑は無力か?」遺族の悲痛な叫びと、罪を償う人の沈痛な思いを感じて欲しいです。
本を読んだ感想
過去と現在が交錯しながらストーリーが進んでいく東野圭吾さんの「夢幻花」という作品がありますが、今回の「虚ろな十字架」も同じようなストーリー展開で、読み進めるうちに登場人物がつながり、真相が判明していくので、読み始めたらとまらないミステリー小説でした。時を忘れて読み進めて、結局1日で読了した作品です。
また、東野版「罪と罰」と感じる「白鳥とコウモリ」という作品もメッセージ性のある社会派ミステリーでしたが、本作品も同じように「死刑、無期懲役という罪を償う」ということに対するメッセージがより強い作品で、読み終わった後に考えさせられる作品です。
犯罪に対する「完璧な審判」がいかに難しいか、を痛感しました。
まとめ
今回ご紹介している東野圭吾さんの「虚ろな十字架」は、読み始めたらとまらない社会派ミステリー小説です。
また、犯罪を犯した人が「罪を償う」とはどうすべきか。「完璧な審判」とはどうあるべきか。を考えさせられる作品で、一生に一度は読んで欲しいと思います。
「手紙」「白鳥とコウモリ」などの東野版「罪と罰」の作品をお好きな人には、特におすすめしたいと思いますし、東野圭吾さんの作品は読みやすいので、ミステリー小説を読みなれていない人にもおすすめしたいと思います。
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