「さよならだけが人生だ」という言葉をご存じの人もいらっしゃると思います。
小説家の井伏鱒二さんが、漢詩を解釈した言葉です。それ以外にも初音ミクさんの曲のタイトルにもなっていますし、ジョジョの奇妙な冒険にも、そのセリフが出てきます。
「さよならだけが人生だ」は、「人生は別れの連続だ」というニュアンスで、「人生の儚さ」を表現した言葉だと私は感じています。
死は誰にも最後に訪れる平等な別れです。いつか自分にも、そして自分の愛する人にも人生の最後の時が来て、今生の別れが訪れます。
また、別れは死だけでがなく、生きていても訪れます。
親の都合で転校したり、卒業してみんなバラバラになったり、子どもの時から追い求めた夢を諦めたり、本当に人生には別れはつきもので、別れには様々な悲しみがセットになっていると思います。
今回ご紹介する本は、清水晴木さんの最新作「旅立ちの日に」です。
千葉県南部の港町が舞台の作品で、様々な別れと悲しみ、そして再生の物語です。
愛する人が亡くなった時の別れ、愛する人が遠い場所にいってしまう別れ、子どもの時から目指していた夢との別れ、様々な別れが描かれています。その別れから押し寄せる悲しみを乗り越える再生の物語です。
家族愛、中学生の一途な恋、男子高校生の友情などを、清水晴木さんの優しい言葉と穏やかで包み込むような表現で綴られた、とても読みやすく、読むと元気になる作品です。

本作品を読んで、みんなに元気になって欲しいと思います。読むと元気になって、前向きになれる、それが清水晴木さんの「旅立ちの日に」です。
こんな人におすすめ
10代、20代の人におすすめします。
ある町の10代、20代の登場人物たちの別れ、葛藤等が描かれていますので、共感出来るところが沢山あると思います。
また、30代、40代の人にもおすすめします。
30代、40代の人の時代背景で物語が進みますし、深い家族愛がテーマの物語もありますので、物語の世界観に入り込めて、登場人物に共感出来ると思います。
今回ご紹介する本
本のあらすじ
1992年、平成4年の千葉県南部の港町から物語が始まります。
お父さん、お母さん、4歳の男の子の3人で助け合って食堂を営む家族に、突然の不幸が訪れます。お母さんが突然の事故で亡くなります。
その悲しみを乗り越えていく、お父さんと男の子の再生の物語が第1話です。
第2話は、バレリーナになる夢を叶えたけど、諦めて港町に帰ってきた女性の物語。
第3話は、親の都合で転校してしまう中学生の男の子と女の子の一途な恋の物語
第4話は、高校生になった男の子と写真好きの男の子の卒業までの友情物語
第5話は、数奇な運命で巡り合ったフェリー乗り場の総合案内人の再生の物語
そして、最終話の「旅立ちの日に」続く物語です。
第1話:木蓮の涙と桜
第2話:白鳥の海
第3話:さよなら、小さな恋のうた
第4話:卒業写真
第5話:だいせんじがけだらなよさ
第6話:旅立ちの日に

1話ごとの短編集でありながら、港町全体の1つの物語として完成されている連作物語
です。ストーリーも素晴らしいのですが、連作になっているストーリー展開が面白い作品です。
本を読んだ感想
前作品の「さよならの向こう側」を読んで、清水晴木さんの作品が好きになりました。
「さよならの向こう側」は、涙なくしては読めない最高の感動小説です。
本作品の「旅立ちの日に」は、同じように胸に迫るような悲しいシーンもありますが、物語全体として思ったのは、「読んだら元気になる本」だと感じました。寂しさ、悲しさに向き合って、再生していく人たちの物語は、元気なって本当に心が癒されます。
登場人物は1話ずつ違う短編小説ですが、同じ港町で起こるので、それぞれの登場人物がお互いに励まし合い、助け合うシーンもある長編小説でもあります。短編小説としてのストーリーに感動し、長編小説としてのストーリー展開も楽しめる素晴らしい作品です。
まとめ
清水晴木さんの最新作「旅立ちの日に」をご紹介しています。
千葉県南部の港町に住んでいる人たちの別れと悲しみ、そして再生の物語です。家族愛、中学生の一途な恋、男子高校生の友情などを、清水晴木さんの優しい言葉で綴られた作品で、読むと元気になって心が癒されます。
1話1話のストーリーも素晴らしく、全ての話が関連しているストーリー展開が面白い作品で、10代、20代の人にも楽しめますし、30代、40代の人にも楽しめる素晴らしい作品です。
悲しみを乗り越えた人達の物語を読んで、みんなに元気になって欲しいです。
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