東野圭吾さんの短編集は、日本人らしい身近なトラブルを描いた「素敵な日本人」を、先日読みましたが、今回紹介する短編集は、人間の欲望をリアルに描いた短編7編が収録されている作品です。
「欲望」は、欲しいと思う心の事です。
人間の思いの中で、「不足しているものを満たしたい。」という事を強く思う事で、その気持ちが強すぎる場合は、周りに迷惑をおかける事や、場合によっては、犯罪行為にもつながるかも知れません。
そんな人間の欲望によっておこる殺人事件を描いた短編集が東野圭吾さんの「犯人のいない殺人の夜」です。

東野圭吾さんと言えば、ガリレオシリーズ、加賀シリーズ等の長編作品も有名ですが、短編集も1話1話が読み応えがあって、私は大好きです。
エンタメの頂点を極めた東野圭吾さんの珠玉の短編集「犯人のいない殺人の夜」をご紹介します。
東野圭吾さんの紹介
東野圭吾さんは、最初から作家として活動しておられた訳ではなく、大学卒業後は、デンソーに勤務しながら、兼業作家として作家活動を開始され、その後デンソーを退職し、専業作家になったそうです。
日本を代表する作家さんで、初期の作品「放課後」から江戸川乱歩賞に受賞される等、数々の賞を受賞し、映画、ドラマの原作も多数出版されています。
私は、マンガは良く読んでいたのですが、子供が出来てからは、なぜかマンガを読まなくなり、その後「小説でも読んでみようかな」と思ったときに図書館で「放課後」を借りたのが、東野圭吾さんの作品との出会いで、そしてとても好きになりました。
東野圭吾さんの作品は、活字に慣れていない人にも読みやすい作品なので、初めて小説を読もうと思っている人におすすめしたいと思います。
今回ご紹介する本
「犯人のいない殺人の夜」のあらすじ
作品名にもなっている「犯人のいない殺人の夜」は、最後に収録されていました。収録されている短編7編のあらすじをご紹介します。
〇小さな故意の物語
「恋」ではなく、「故意」の物語です。ある高校で男子高校生が屋上から転落して、死亡する事件が起こります。
その転落事故は「自殺」として解決する方向に向かいますが、親友の男子高校生と死亡した高校生の彼女は、自殺とは考えられず、二人で真相を調べます。
その事故の真相は、何だったのでしょうか。小さな故意とは、どんな事でしょうか。
〇闇の中の二人
ある資産家の家で、生後3ヶ月の赤ちゃんが首を絞められて殺されます。
この信じられないような残虐な事件の捜査に、前妻の子供の小学生を担当している教師が、巻き込まれていきます。
その残虐な事件は、ある夜の二人の行動がきっかけで引き起こされたものでした。
〇踊り子
男子中学生が、塾の帰り道に夜の有名女子高の体育館で新体操を踊る女生徒に一目ぼれします。
その中学生は、水曜日だけに練習している女生徒を陰ながら応援するようになります。
でも、ある日を境に女生徒が、体育館に現れることはなくなりました。
なぜ、女生徒は踊るのをやめてしまったのか、その中学生の家庭教師が、真相に迫ります。
なぜ、踊り子は、踊れなくなったのか。
〇エンドレス・ナイト
大阪に単身赴任で仕事をしていた男性が、職場で殺害されます。
大阪が嫌いな奥さんが、その事件を捜査する刑事からの要請で、大阪に向かいます。
なぜ、夫は殺されたのか。
なぜ、奥さんは大阪が嫌いなのか。
大阪の街で起こった殺人事件は、大阪の街だからこそ起こってしまったのか。
〇白い凶器
ある会社で転落事故が発生します。
そして、それから数日後に同じ職場の同僚が、自分が運転する車の事故で、命を落とします。
この二つの事故は、偶然なのか、同じ犯人による事件なのか。その二人の職場に勤務する女性の過去に事件の真相があるのか。
白い凶器は、人を殺害するような凶器なのか、白い凶器は、誰を殺害したのか。
〇さよならコーチ
アーチェリーの女性選手が、自殺シーンを動画に収めて自殺しました。
その動画は、一緒にアーチェリーでオリンピックを目指していたコーチ宛でした。
その女性は、なぜ動画を残したのか。その動画にどんな意味があったのか。最後に語った「さよならコーチ」にどんな意味があったのか。
〇犯人のいない殺人の夜
ある資産家の家で、女性がナイフに刺され殺害されます。その場に居合わせた家族と子供の家庭教師の男女は、殺人事件を隠蔽しようとします。
でも思いもよらない事から、事件が明るみになり、資産家は逮捕されます。
資産家が逮捕された事で、事件は解決と思われましたが、ある事から意外な事実が判明します。
その女性を殺した犯人は、誰なのか。犯人のいない殺人の夜の真相は何なのか。
本を読んだ感想
本作品を読んだ後、東野圭吾さんの作品の「変身」「魔球」のような初期の作品を思い出しました。
今回の作品のほとんどは、事件の真相を知った時に、後味の悪さを感じる作品だったからです。
小さい出来事から殺人事件にまで発展する事実、そして人間の欲望の深さが招く事実に本当に驚きました。
まとめ
今回の作品「犯人のいない殺人の夜」は、初期の頃の東野圭吾さんの作品を思い出すような短編集なので、東野圭吾さん好きの人に是非ともおすすめしたいと思います。
また、飾った話ではない、人間の欲望のリアルな部分を感じたい人にもおすすめしたい作品です。
人間の欲望のさまざまな一面が交錯しておこる「一夜の殺人事件」。
人間心理と欲望が交錯するミステリーの醍醐味を堪能できる短編集です。
エンタメの頂点を極めた東野圭吾さんの珠玉の短編集です。
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