【医療小説のおすすめ】神様のカルテの夏川草介が描く高齢者医療とは

勿忘草の咲く町5.おすすめ小説
著者「夏川草介」作品名「勿忘草の咲く町で、安曇野診療記」

櫻井翔さんが主演で映画化され、福士蒼汰さんが主演でドラマ化された「神様のカルテ」は、ご存じの人も多いと思います。

信州松本にある地域医療を担う総合病院が舞台の医療小説です。

文豪のような話し方の主人公が、心温まる信州の自然と人情に支えられながら、過酷な医療現場で奮闘する姿を描いた作品で、夏川草介さんのデビュー作です。

今回ご紹介する本は、夏川草介さんの「勿忘草の咲く町で(わすれなぐさのさくまちで)、安曇野診療記」です。

「神様のカルテ」と同じ信州にある病院が舞台の物語です。

研修医1年目の男性医師と同じ病院に勤務する3年目の女性看護師が地域の医療現場ならではの患者さんの診療に奮闘し、時には葛藤しながら成長していく姿を描いた作品です。

病気になったり、怪我したりしても、医療の進歩により命を救われるケースが増えていることは、素晴らしいことだと思います。

その一方では、地域の医療現場では、「老人医療」という課題に直面しています。

高齢化が進む地域の医療現場では、高齢者の長期入院の患者さんが増えて、医療現場を圧迫し、近い将来、医師が命の選択を行わざるを得ないような状況になっているようです。

現役医師の夏川草介さんが、そんな老人医療の現場に従事する医師と看護師を描いた作品です。

HT
HT

本作品は、過酷な医療現場を描いた作品ですが、読み終わった後に、初夏の風がさわやかに通り過ぎたような心地よさを感じます。夏川草介さんらしい小説だと思います。

夏川草介さんのご紹介

夏川草介さんは、1978年大阪生まれで、信州大学を卒業されて今も現役医師で医療現場でも活躍されています。

2009年に「神様のカルテ」で第10回小学館文庫小説賞を受賞して作家デビューされました。

夏川草介さんの代表作の「神様のカルテ」は、シリーズ作品で「神様のカルテ」「神様のカルテ2」「神様のカルテ3」「神様のカルテ0」「新章神様のカルテ」と5シリーズ出版されています。

主人公のキャラクターが際立つ作品で、妻の職業が登山写真家という設定も意外性があり、過酷な医療現場を描いた作品でありながら、お互いを理解しあい、そして助け合いながら奮闘する姿に心が温まります。

また、「神様のカルテ」は映画やドラマ化もされていますので、映像作品としても楽しめます。

医療小説以外にも「本を守ろうとする猫の話」「始まりの木」などもあります。

夏川草介さんの小説は、登場人物の優しい言葉使いと、読みやすい表現で、どの作品も読み始めたら止まらない素晴らしい作品です。

今回ご紹介する本

本のあらすじと感想

信州松本市郊外にある地域医療を担う「梓川病院」の医療現場で活躍する医師や看護師の物語です。

主人公の1人目は、梓川病院に務めて3年目の女性看護師の美琴さんです。天真爛漫で仕事もできる病院からも信頼の厚い看護師さんです。

主人公の2人目は、梓川病院に研修医としてきた医師1年目の桂さんです。花屋さんの息子という変わった経歴と患者の気持ちに寄り添う優しいお医者さんです。

「プロローグ、窓辺のサンダーソニア」で、2人は出会います。病院内での出会いとしては、少し風変わりな出会いでした。

「第1話、秋海棠の季節」では、研修医の桂先生が美琴さんのいる内科に研修にきている時の話です。高齢の多い内科病棟ですが、桂先生が担当するのは妻子のいる働き盛りの48歳男性のすい臓がんを担当します。

「第2話、ダリア・ダイアリー」で、桂先生は循環器内科に研修に行きます。そこの指導医は通称「死神先生」です。大きな課題を抱えた老人医療の本質の中で、激しく葛藤することになります。

「第4話、カタクリ賛歌」でも、内科に戻った桂先生は、激しく葛藤します。でも、老人医療とその患者の家族の思いに戸惑いながらも自分の信念を曲げずに、医療に従事します。

「エピローグ、勿忘草の咲く町で」は、研修を終えて、大学病院に勤務した桂先生と研修期間中に支え続けた美琴さんの始まりの物語です。

高齢者医療の現場をリアルに描いた作品なので、生と死がテーマの1つです。それも生きることと死んでいる事の差は何か。というかなり重いテーマの物語です。

これからの高齢化社会の大きい課題を考えるきっかけになると思います。

でも、そんな重いテーマでありながら、読み終わった後に「さわやかさを感じる」作品でもあります。

天真爛漫な美琴さんと心優しい桂先生の微笑ましい会話や、病院に従事している他の医師や看護師の優しさ、そして、頑張っている患者さんの姿に感動しました。

1話1話、読み終わった後に「初夏の風が通り過ぎたような心地よさ」がありました。

また、桂先生が花屋さんの息子という設定なので、沢山の花が登場します。それぞれのタイトルになっている花が良い演出になっています。

まとめ

「神様のカルテ」の作者、夏川草介さんの「勿忘草の咲く町で、安曇野診療記」をご紹介しています。

現役医師の夏川草介さんが、地域の医療現場で直面している「老人医療」をテーマにした物語です。生と死をテーマにした高齢者医療の現場をリアルに描いた作品で、「生きることと死んでいることの差は何か。」というかなり重いテーマの物語です。

これからの高齢化社会の大きい課題を考えるきっかけになると思います。

でも、そんな重いテーマでありながら、読み終わった後に「さわやかさを感じる」作品でもあります。

夏川草介さんの「神様のカルテ」をご存じの人も、初めて夏川草介さんの小説を読む人にもおすすめしたい本です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました