「人生、山あり谷あり」という言葉は、人生を語る時によく引用されていると思います。
- 山を登る前に感じる「山頂への憧憬」
- 足元の悪い登山道を自分の力で歩いて山頂に着いた時の「達成感」
- 山頂に広がる景色を見た時に感じる「幸福感」
- 道に迷って谷あいに迷い込んだ時に感じる「失望感」
そんな登山の時に感じる思いを人生に例えた言葉が「人生、山あり谷あり」だと思います。
「人生から山を感じる。」「登山から得た事を人生に活かす」など、人生と登山は、着かず離れず密接な関係にあるように感じます。
今回ご紹介する本は、湊かなえさんの「続・山女日記、残照の頂」です。
日々の思いをかみしめながら山に登る女性達の短編小説です。
前作の「山女日記」は、短編連作小説でしたが、本作品は、8人の女性が山に登る姿を描いた4話が編集されている短編集です。
〇北アルプスの「後立山連峰」をそれぞれも思いを抱えて登る2人の女性
〇「北アルプスの表銀座」を大学の登山仲間の男性への思いを抱えて登る2人の女性
〇「立山・剱岳」を山岳ガイドになりたい娘と反対する母親で登る親子登山
〇滋賀県の「武奈ヶ岳」を登る女性の手紙、その手紙を読んで福島県の「安達太良山」に登る女性の往復書簡
「後悔を抱えながら登る女性」、「届かない思いを抱えて登る女性」、など人生の苦悩を抱えて登る女性たちの思いに共感出来る人は、沢山いらっしゃると思います。
登山好きの女性、登山に興味のある沢山の女性に読んでいいただきたいと思います。

人生は、山あり谷ありです。
「続・山女日記、残照の頂」は、そんな人生の日々の思いを抱えて登山する女性たちの葛藤と再生の物語です。
今回ご紹介する本
湊かなえさんのご紹介
湊かなえさん
湊かなえさんは、アパレルメーカー勤務、青年海外協力隊としてトンガ赴任、帰国後は淡路島で高校の家庭科の非常勤講師等、さまざまな経験を経て作家として活躍されておられます。
また、主婦業と執筆活動をこなす素晴らしい人で、2016年にベストマザー賞を受賞されています。
代表作は、2009年本屋大賞を受賞した「告白」になると思いますが、ご本人は「告白が代表作と言われないようにしたい」という思いで、その後も「往復書簡」等のミステリー小説を執筆されておられるそうです。
私が初めて読んだのは「告白」でした。
「胸が締め付けられるような感覚」を感じながら読んだことを思い出します。
本の内容と感想
登山好きな湊かなえさんが描く「山女日記」の第2弾が、「続・山女日記、残照の頂」です。
山好きの女性を「山ガール」と言ったりしますが、湊かなえさんの山好き女性は「山女」です。
「人生の悩みを抱えている山好き女性」が、湊かなえさんの「山女」だと感じています。
そんな山女が、日々の思いを抱えながら山に登る姿を描いたのが、「山女日記」です。
登山と人生をリンクさせて進んでいく4つの物語は、沢山の女性が共感出来ると思います。
第1話、後立山連峰
喫茶店を経営する年配の女性と喫茶店で知り合った山好きの女性の2人で、後立山連峰に登ります。
喫茶店を経営する女性は、ご主人と死別した未亡人で、定年退職した後、喫茶店をやりたかったご主人は、喫茶店がオープンする前に亡くなっていました。
一人で切り盛りしている喫茶店に来ていた山好きの女性に誘われて、ご主人が好きだった山岳写真の五竜岳を目指して、2人で登山に行きます。
そこで依頼した山岳ガイドとの不思議な縁を感じながら、後悔を抱えながら登山する2人の山女の物語です。
第2話、北アルプス表銀座
音大生の2人の女性で、北アルプス表銀座に登ります。
登山経験のない2人は、同じ音大で知り合った男性に誘われて、3人で登山を楽しんでいました。
今回その男性はいません。今回は、2人でその男性が企画した北アルプス表銀座に登ります。
仲間へのそれぞれの思いを抱えた2人の山女の物語です。
第3話、立山・剱岳
早くに父親を亡くして、母一人、子一人で育った親子が立山・剱岳に登ります。
大学に入って登山部に入ったことで、親子の関係に溝が生まれてしまいました。それでも登山に魅了された娘は、大学を卒業したら山岳ガイドになりたいという夢を持ちます。
そんな時に母親と一緒に立山・剱岳に親子登山に行くことになりました。
母親の思い、娘の思いを抱えた2人の山女の物語です。
第4話、武奈ヶ岳・安達太良山
同じ大学の2人ですが、今はそれぞれの生活があり、ある出来事から30年間話したこともない友達に、武奈ヶ岳に登った時の手紙を書きます。
今までの人生と武奈ヶ岳登山とを重ねた女性の思いがこもった手紙です。
そして、その手紙を受け取った友達の女性は、安達太良山に登ります。そして、同じように思いのこもった手紙を書きます。
往復書簡が描く2人の山女の物語です。
熟年夫婦の本音と後悔、LGBTQで葛藤する女性の思い、反発する親子の思い、後悔を取り戻そうとする二人の思い、山好きの女性、山に興味ある女性、人生に悩める女性におすすめしたいと思います。

1話の中にも、それぞれの女性の目線で描かれる章にわかれていますので、読みやすくてその人の悩みと葛藤が心に響きます。
まとめ
湊かなえさんの「続・山女日記、残照の頂」をご紹介しています。
登山好きな湊かなえさんが描く「山女日記」の第2弾です。
「人生の悩みを抱えている山好き女性」それが、湊かなえさんの描く「山女」だと思います。「続・山女日記、残照の頂」は、そんな山女達の短編集です。
「後立山連峰」、「北アルプスの表銀座」、「立山・剱岳」、「武奈ヶ岳・安達太良」を8人の女性が日々の思いをかみしめながら山に登る物語は、沢山の女性が共感できると思います。
登山好きの女性、登山に興味のある沢山の女性に読んでいいただきたいと思います。
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